「インターネットと宗教」プロジェクト

「インターネットと宗教」プロジェクト趣意書

(愛称 CMCプロジェクト)
CMC = Computer-Mediated Communication コンピューター媒介コミュニケーション

研究の目的

インターネットに代表されるような、コンピュータを介した相互的なコミュ ニケーション (Computer-Mediated Communication: 以下 CMC と略) が急速 に普及している。現代宗教をとらえるにあたっても、このような加速度的な情 報環境の変化と、それに伴う社会構造やメンタリティの変化を考慮しないわけ にはいかない。 電子メディア上で刻々と変化する状況は、しばしばこれらの研究対象としての 価値の低さと見なされたが、そうかといって、あるいはそのような批判故に、 資料・統計の蓄積が積極的になされてきたわけではなかった。われわれは、量 的・質的・時系列な資料・統計を蓄積し、後世代に研究の余地を確保するとと もに、統計的・解釈的・歴史的な分析を行うことに意義を感じる。

また、情報化が既存の宗教の教義・儀礼・組織にもたらす影響のみならず、情 報ネットワークの形成するコミュニケーション空間における新たな宗教性の創 出にも注目する必要がでてくるだろう。たとえば、神智学者ルドルフ・シュタ イナーの思想・実践をめぐるメーリングリストの展開に見るように、少数派に 属するゆえに、地理的にも領域的にも隔てられていた人々が、インターネット において新たな共同性を築きつつあることなどをみていただきたい。これは古 典的な社会調査の手法では捉えがたいが、さりとて無視できるものではない。

本プロジェクトは、当学会における「情報時代と宗教」をめぐってのシンポ ジウム及びプロジェクトを引き継ぐものである。「情報時代と宗教」プロジェ クトにおいては、マスメディアや通信手段の発達全般を含めた、社会の総体的 な情報化が宗教にとってなにを意味するかについて、様々な提言がなされた。 本プロジェクトにおいてはその成果をひきつぎつつも、CMCと宗教との関わ りに特に焦点を当てて研究を行なう。

CMCへの関心は、日本語圏においても英語圏においても未だ萌芽的な段階 である。またいわゆる電子メディア論においては、現状についての十分吟味さ れたデータを持たない、抽象的な言説も少なくない。本プロジェクトでは、コ ンピュータ媒介という特質を利用して、コミュニケーションの具体的なありか たについての様々なデータを収集し、それに基づいて実証的な分析・解釈を行 なうことを目指している。刻々と変化する状況をそのつど記録し資料化してい くと同時に、それらを時系列的に分析する必要も強調しておきたい。また、先 行研究についても、メンバーで分担して検討し、充実した文献解題を作成する ことにより、この分野を一つの研究分野として確立させたいと考えている。

このプロジェクトは、複数の作業グループの集合体という構造を持つものとす る。プロジェクトメンバーは、それぞれ一人または複数人で作業グループを作 り、特定のテーマについて共同で研究を行なう。その成果は、メーリングリス トによって随時交換しあうと共に、10月頃に予定している合宿にて報告しあい、 研鑽と交流をかねたい。

データ収集に関しては、(財)電気通信普及財団の平成9年度助成研究「コ ンピュータ・ネットワークの普及と宗教的行為の変容に関する調査研究」(黒 崎・田村・深水・葛西)と連動する。この助成金研究を作業グループの一つと 位置づける。この4人は発起人と重なるが、助成研究そのものはプロジェクト 内の一作業グループにとどまり、他のプロジェクトメンバーと助成研究関係者 とは独立した関係を保つ。

研究の概要

  1. インターネット上の宗教活動について、調査記録の蓄積および資料収集を行う。
  2. 活動当事者への面接調査。
  3. 国内諸教団のCMC取り組みの実際についての調査。

本年度の計画

  1. インターネット上での観察・資料収集。データの統計処理と解釈。
  2. メーリングリスト設置による研究作業(設置・通信費としてメンバーから2000円徴収)。メーリングリスト上で数回の中間報告を予定。
  3. 研究合宿(10月ごろ大阪を予定)
  4. 論文・学会発表による研究成果の、メンバー各自・共同での公開。

発起人

(50音順)

李 仁子、葛西賢太、川島堅二、紀藤正樹、黒崎浩行、 鈴木健太郎、田村貴紀(責任者)、深水顕真、村上興匡。



Last updated on: Jul 16, 1998.
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