「宗教事件の事例から見た、宗教サイトの求心力と遠心力」

紀藤正樹 (弁護士)

私の体験していることについて話すが、別にアンケートを採ったわけではないので、それが普遍化するものかどうかは、検証してほしい。

インターネット上の情報に関して、三種類に分けられると思う。宗教教団側が正規に発表している情報(BI)、教団についてポジティブなもの(PI)ネガティブなもの(NI)がある。

PIであれば教団には都合がいいかというと、信者の独自な理解であるだけに教団の趣旨には添わないということが起こる。外形面からいうと、組織の中央集権的な機能が喪失してくる。場合によっては、人事的な争いの際にマスコミにリークするのではなく、インターネット上に幹部のネガティブな情報を掲載していって、その幹部の内部での地位を落とすことがある。

内容面・精神面でいうと、教義の一元管理が不可能になり、秘儀が喪失する可能性を持っている。秘密の儀式や秘密のセミナーの内容をインターネット上に公開する事例がある。他言無用のセミナーや儀式は存在できなくなる。

入信に際して、以前はBIだけの知識で信者が市民を勧誘した。勧誘される側の情報も限られていた。しかし、今PI・NIを得る機会がある。現在入信する人は、それでもなおかつ入信する。従ってそこには、論理だけ無く好き・嫌いや安心といった感情が関わっている。脱会活動の場合も、以前のようにNIを与えれば良い状況ではない。つまり論理的に説得するのが難しいという状況が増えつつある。インターネット以前からNIが多く流れている様な教団は、このような傾向が強い。

信者を統制するためには、情報を制限するしかない。出家主義の教団の場合は、情報の制限がしやすい。

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質疑応答

(質問者) インターネット上の情報を巡って、米国ではサイエントロジーが裁判を起こしていますが、日本では例があるか?

(紀藤) 日本の多くの教団は、訴訟戦略を採っていないので、ライフスペースによって私が訴訟された例だけである。
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(発表・質疑応答ともに、発表のテープ起こしを元に田村貴紀が要約した。)

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